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『宴のビーナス』(第11夜)

作…FishBone


 陰鬱な檻の中で優子は目覚めた。
 あの悪夢のような食事を終わらせた後、力無く檻まで這っていった優子は精神的な疲れもあってか、いつのまにか檻の中で寝てしまっていたのだった。
 あの後唯も含め、他の牝奴隷達とは一切口をきかなかった。
 それどころか、視線さえもあわせられないというのが実状だった。
 当然だろう。唯があのような仕打ちにあったのも元はといえば優子自身に原因があったのだ。
 他の牝奴隷達の非難にも似た視線に堂々とあらがえる程、優子は図々しくはなかった。
 のそりと上半身だけを起きあがらせる。
 あの後、性奴隷達に洗浄してもらったとはいえ、かすかに鼻につく異臭が優子の惨めな想いに一層拍車をかける。
「この先、私一体どうなっちゃうのかな……………。」
 孤独と恐怖感によって、ついつい弱音を吐いてしまう………。
 しかし、無機質なコンクリートで囲まれた檻の中ではその呟きを聞く者は誰もいるはずもなかった…………。
---------------------------------------------------------------------------
 豪奢な応接間。
 一見してその高価さがみてとれる揺り椅子に、その高価さとは不釣り合いな中年が座っていた。
 その容姿たるや、カエルを連想させる様な醜さである。
 でっぷりと太った腹、分厚い唇、短い指、腫れぼったい瞼。
 その上、嫌みたらしく紫煙を噴き上げる葉巻。
 よほどの物好きな女性でない限り、彼にに言い寄ることはおよそないであろう容姿。
 だが、そんな彼の容姿に反して上品な家具や、調度品が、いかにも一筋縄ではいきそうにない海千山千の雰囲気を醸し出していた。
 コンコン、ドアが丁寧な感じでノックされ、一人の男が室内に入ってきた。
 先程、優子や綾達を散々痛めつけた「社長」と呼ばれていた男である。
「失礼致します。先生、ご機嫌はいかがでございましょう?」
 先生と呼ばれた先程の男は鷹揚に頷く。
「ふむ………まぁまぁ、といったところだ。ところでなんだ。君、家畜どもの調教は順調に進んでいるのかね………。」
「ええ、おかげさまで順調です。これもひとえに先生のおかげでございます。」
「ふふふ………君もだいぶ、世辞が上手くなったな。」
「いえ、滅相も………。ところで、先生ひとつお耳にいれておきたいことが………。」
 そう言うと、社長と呼ばれていた男は先生と呼んでいる男になにやら耳打ちをし始めた。
「な、なんだとっ!?それは本当か?探偵の助手だとぉ?」
「ええ、間違いありません。本人に薬を施し、聞き出しましたので………。」
「それで、既に手はうっているんだろうね?」
「その点はぬかりなく………。既に2匹とも檻につないであります。始末してもよろしいのですが、家畜として飼い慣らすのも一興かと。」
「ふむ………。しかし、何かの手違いで逃げ出したりなど、して貰っては困るよ。君ぃ………。」
 その時、この醜い中年は何か思いついたらしく、わざとらしく手をポンッと打つ。
「ふふふ………、君、わしに良い考えが浮かんだよ。こんなのはどうかね?」
 今度は、先程とは逆に先生と呼ばれる男が社長と呼ばれていた男に耳打ちする格好となった。
 しばし、二人はなにやら密談した後。
「なるほど!さすが、先生ですな!手前どもだけでは、そこまで気がまわらなかったことでしょう。早速、仰せのままに………。」
「うむ。ひとつ頼むよ。出来上がったらわしの前にひきずりだしてくれんかね?」
「それはもう………。では、私はこれにて失礼を。」
 社長と呼ばれていた男は、入ってきた時同様に慇懃な礼を済ませ、部屋から退出していった。
「ふふふ………我ながら、次から次と、面白いことを考える………。」
 紫煙をくゆらせながら、男は唇を醜くゆがめて一人ごちた。
--------------------------------------------------------------------------
 バタンっ!
 ドアが荒々しく閉まる音と共に、複数のしかも、いかにも男性とわかる様ないかつい足音が地下牢にこだました。
 それぞれの檻に入っている牝奴隷達はこの絶対的な支配者達に様々な視線をなげかける。
 怯えたような視線を向ける者、媚びるように甘えた視線を向ける者。
 そして、男達は一つの檻の前で立ち止まる。
「牝豚優子!外にでろっ!」
(よ、呼ばれた!)
 胸がグッと締め付けられる感じがする。
「ブーッ、ブヒッブヒッ!」
 この無様な鳴き声をしないと後が怖い………。先程の屈辱の食事で優子は嫌と言うほど身にしみている。
「ふん、だいぶ自分の身分がわかってきたじゃないか………。」
「ブヒーッ、優子は淫乱な牝豚です。」
「はははっ!おもれーなぁ?この豚はよぉ?」
 ニヤけた顔をしながら仲間の男に同意を求める男。
 どこから見てもまともな職業に就いているとは思えない風体である。
「さぁ、豚ちゃん、お散歩のお時間でちゅよ~ってか?ぎゃはは」
「ほらよ!」
 男達の一人が優子に手を差し出したまま動かない。
(???この人は何をしてるんだろう?)
 バシッ!
「きゃあああ!!!」
 きょとんとしていた優子に男が強烈な平手打ちをかました。
 かなりの勢いだったのか、優子の体が跳ねる。
「この、低脳バカ豚がっ!人間様が手を差し出したら、てめぇの方から首輪の手綱を差し出すんだろうが!そんな事もわかんねぇのか?」
「ブヒィー、ブヒィー申し訳ありません、申し訳ありません。ひぐっ、ひっく………。」
 涙目になりながら、額を床にこすりつけんばかりに謝罪する優子を見て、男達は悦に入る。
 そして、ぶたれた頬を真っ赤にしながら優子はおずおずと自分の首輪を男達に差し出した。
「ブヒブヒ、ど、どうか、牝豚優子の手綱をお持ち下さい………。私のような変態の豚の手綱を持って頂くなんて身に余る光栄ですぅ………。」
「ふん、じゃあ、ついて来な。」
 男の一人が乱暴に手綱を手に取ると、優子の顎がのけぞる程にぐいぐい引っ張りたてた………。
 優子といえば、それに追いつくのがやっとのことで、時折、首が絞まっては「ひゅくっ」…「うぇっ」と無様な声を出しては男達を喜ばせるのに一役かっていた。
 そして、地下牢を出て、無限に続くとも思える回廊を散々引きずり回された末に木製の大きな扉の前にたどり着いた。
「おい、豚着いたぞっ!」
 ギギギギギィィィィィーー!
 重々しい音と共に両開きの扉が開いた。
 そこには石壁で囲まれた多少広めの部屋で、4,5人が部屋に入っても充分余裕があるようだった。
 そして、何にもまして、目を引くのは中世の拷問部屋を思わせるような数々の拷問機で、壁に沿ってズラリと並べられており、見る者に無言の威圧感を与えていた。
 所々にある床の上の真っ赤なシミがまた一層と、今まで行われてきた想像も絶するような拷問を連想させた。
 そして、中央には木製にテーブルが一つポツンと置かれてあった。
「さぁ、入れ!グズグズしってと、またブン殴るぞ!」
 本来ならこんな恐ろしげな部屋は入りたくもないのが本音だが、こう言われては優子も素直にならざるをえない。
「ブッブヒッ!」
 恐る恐ると、部屋に入っていく優子。
「よし、じゃあ、そのテーブルの上に座れ!大股開きでな!」
「早くしろ!あんまり、手を焼かすんじゃねぇ!」
 恫喝の声にびくつく優子。既に逆らおうという意志さえもこの声に殺されてしまったのだろう。
 実際、男達は幾度もの修羅場をくぐりぬけてきている強者なのは今までの所業で疑いようもない事実であり、優子は軽率にもこの館に忍び込んだ事を今更ながらに後悔するのだった。
 優子は言われた通りの格好でテーブルの上に座り、股を思いっきり広げた。
「ふふふ、いい格好だな?優子。今から何をするか、知りたいか?」
「ブヒッ!牝豚優子はご主人様方にどのような事をされても一切、不満はございません。どうぞ、お気の済むまでこの卑しい牝豚をおなぶり下さい………。」
 優子もことここにいたって、男達に逆らうのは得策ではないと気づき、男達に迎合し、媚びをうることにした。
「へっ!ちったぁ、しおらしくなったじゃねーか………。えぇ!」
「じゃあ、教えてやろう。今から牝豚にしるしを刻むんだよ!わかるか?低脳豚!」
「ブ、ブヒィ………し、しるし…………ですか?」
 唐突に「しるし」と言われても何のことだか、わからない。
(この人達は一体、何のことをいっているのだろう?)
「おいおい、わかんねぇのか?まったく、鈍いったらないぜ!この家畜豚はよぉ!お前、本当に探偵の助手か?それとも、なんだ?色仕掛け専門か?ぎゃははは!」
「ブヒーッ、ゆ、優子は色仕掛け専門の変態色ボケ豚です………。お願いします! しるしって、なんでしょう?教えて下さい」
 血を吐くように言った台詞だが、自分がこれから何をされるのか、わからないよりはマシだった。
「ああぁん?入れ墨だよ、イ…レ…ズ…ミ!わかったか?お前みたいな探偵なんて輩は全くもって油断ならねぇからな。もし、万が一ココから逃げ出したとしても世間に出られないような体にしときゃ、心配ないだろ?そういうこった………。まっ、運が悪かったと思ってあきらめるんだな」
「そ、そんな…………………」
 残酷な宣告をされ、気が遠くなりそうになる………。入れ墨をいれられるなんて………。
「なんだぁ?どうした?そんなに青ざめて。イヤならやめてやっても、いいんだぞ!そのかわり、なんてったっけなぁ?お前の先輩………。あいつが犠牲になるだけなんだから………。俺達はどっちだって、いいんだぜ?命令はどちらか一人にって話だったんだからなぁ………」
 綾さんが犠牲に?………私の代わりに?…………。
 そんなのダメよ!
 優子が探偵事務所に助手として勤め始めて、間もない頃。右も左もわからない優子は尾行の失敗や、些細なミスを何回となく繰り返していた。
 自分は探偵という職業には向いていないんだ。もう、辞めよう………。
 何度となく、思った。その度に毎回優子を励ましてくれたのが綾だったのだ。
 綾はまるで優子を妹のように可愛がったし、優子もまた、綾を姉のように慕っていたのだ………。
 その綾が犠牲になる………。私が「嫌だ」と一言いえば………。
 綾さんを私の身代わりに?出来ない!出来るわけがない!!
「おい!どうすんだよ!豚っ!嫌なのか?それともしるしを喜んで受けるか?どっちだ? はっきりしろ!」
「わ、私に!優子にしるしを下さいっ!」
「ほほう………。なかなか、仲間思いのいい返事じゃないか………。だが、俺達はそんな通り一遍のおねだりじゃ動かねぇぜ?」
「お願いする時の言葉を教えてやるよ!へへへ………」
 男達の中の一人が優子の耳元でこそこそと囁く。
(くっ!そ、そんな恥知らずな台詞を?言わなければいけないの??)
 屈辱に顔が歪む。
「おらっ!どうした??言えないなら、言わなくてもいいんだぞ?ひゃはは」
「待ってっ!………待って下さい。言います………………言いますから…………。」
 しばし、逡巡した後、
「み、皆様、牝豚優子はこのお屋敷で飼われる飼い豚です。ど、どうか、この卑しい家畜豚の優子に、誰が見ても変態のド淫乱な牝豚だとわかるように入れ墨を入れて下さい。お願いします。取り返しのつかない身体になってもかまわないんです。一生、男の人の股の下で這いつくばって生きていきます!」
 優子は額を擦りつけるようにしながら、土下座をして懇願した。
「ははは………よく、言えたじゃないか。待ってな」
 そう言うと、リーダー格らしい男は、男達の中の一人が持っていた少し大きめのバッグをがさごそとかき回したかと思うと、中から、入れ墨を彫るための機械を引っぱり出した。
 その間に他の男達は優子を元の大股開きの格好に戻させ、なおかつ後ろでを縄できつく縛った。
「へへへ………これで、しっかりと刻んでやるからな………」
「その前に面白い趣向があるんだぜ?牝豚!」
 まだ、他にもあるのか?………今までも充分うんざりなのに………。
 優子は目の前が真っ暗になりそうだった。
「お前、確か珍しい能力があるんだってな?なんだっけよ、そうそう超能力ってやつか?」
「ちょっとした物を手を使わずに動かせるらしいじゃねーか。そこで、俺は思いついたんだがよ。お前のその力を使って最初の一彫りはお前自ら彫るってのはどうだ?ははは」
「こりゃー、いいや、自分で自分の身体を彫るのか?笑えるぜ!」
 な、なんて人たちなんだろう…………。こんな、こんなことって…………。
 目眩にも似た感覚が優子を襲う。
 一体、自分は今現実の世界の存在しているのだろうか?本当は悪い夢を見てるだけなんじゃないか? 男達の笑い声が頭の中でぐるぐると巡るように聞こえる………。
 これは………夢?…………そ………れ………とも………現……………じ……つ……?
 理性は白濁とした粘液にまみれ、ズブズブと底なし沼に沈んでいく。
 プツンッ!
 何かが自分の中で弾ける音がした。
「あ………あはっ!入れ墨………入れ墨、入れてぇ?はやくぅ~、この淫乱豚にうんとイヤらしい柄や言葉を彫り込んでぇ~………ねぇ、お願い~」
 妖艶に舌なめずりをしながら、優子の瞳はすでに虚ろになり、男達を誘うべく腰をひくつかせていた。
「おやおや、なぶりすぎたかな?壊れちまったかぁ?ははは」
「まぁ、それも見てて、面白いがな。人間が壊れていく様は何度見ても飽きねーよ」
「ほれ!最初の一彫りは手前ぇで彫るんだぞ!やってみろ!」
 男はテーブルの上に無造作に彫り機を放り出す。
「うぅん、ちょっと待っててね。うっ…………うう」
 イヤらしい笑みを浮かべた後、優子は精神を集中し始める。
 すると、どうだろう。無造作におかれた彫り機がピクリ、ピクリと動いたかと思うと少しずつ宙に浮き、ゆっくりと優子に向かって動き始めた………。
「す、すげぇー………。初めて見たぜ!インチキなんかじゃなかったんだな………」
 男達も能力の事は聞いていたとはいえ、目の前で実際に見るとやはり、唖然としてしまう。
 そして、彫り機は優子の身体の近くまで来ると今度は独りでに、電源が入り「ヴヴヴヴっ」と、鈍い音を立て始めた。
「よーし、いいぞ!優子、最初の一彫りは恥丘からだ!いいな?」
「は……い、、かしこまり…………ました。ご主人様」
 男の言った通りに彫り機はだんだんと、優子の恥丘に近づいていく…………。
 そして……………。
 ブツッ!!!!!!!
「きゃああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
 優子は目の前が真っ暗になり、気が遠くなっていくののがわかった。
--------------------------------------------------------------------------------------
 3日後。
 陰鬱な檻の中で優子は寝ていた。
 この間、男達にひったてられた時と同じ様に。
 ただ、違っているのは優子の身体の至る所に刻まれた飼い豚の証、入れ墨が施されていることだった。
 優子はあの時、気絶してしまったのだが、その後男達によって、3日かけてこの上もなく無様で、惨めで、淫らな体に改造されたのだ……。
 その間、優子には睡眠薬が投与され続け、優子自身はまだ、この自分の変貌を知らないのだった。
 額には「家畜」、胸には、男子便所のマークが、その他にも、男性器がリアルに彫られてあったり、「公衆便所」、「肉ダッチワイフ」、「淫乱豚女」、「チ○ポ中毒女」、女性器を表す卑わいな記号等々、身体中至る所に数え上げればキリがない程に彫られているのだ。
 また、クリトリスの包皮は切り取られ、乳首、へそ、クリトリス、大陰唇、小陰唇、果ては鼻にも家畜の鼻輪のようにピアスが通されていた。
 優子はまだ、このことを知らない…………。
-----------------------------------------------------------------------------------------
 牢の中を監視するビデオカメラからの、優子の寝姿を見ながら、先生と呼ばれている男は一人、ほくそ笑む………。
 この牝豚は、ハッと気がつき、自分の姿を見てどう思うのか?発狂して、自殺してしまうのだろうか?
 想像するだけで、己の下半身に熱く血がたぎってくるのがわかる。
「ふふふ…………楽しみはまだまだ、これからだな…………くっくっくっ」
 気味の悪い笑いをしながら、男はまた、紫煙を吐き出すのだった……………。

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